親連れ

リナはその日は眠くなかった、ママは早く寝なさいというけれど、ドキドキして眠れない、もっと起きていたい。

するとママはこんな話をしだした。

とても寒い日のお話

外はシトシトと雨が降っていて、家族全員が揃っていた。

テレビもない時代起きていてもやることがなく、その子のお父さんとお母さんは、夜ご飯の後早く寝ようとした。その子というのは、タロウという男の子、6つになったばかり。

眠れない、雨が降っていたから外で走り回る事もできず。畑仕事も、手伝えなかった。疲れていないし眠れない。

暫くすると締め切った木戸から「トントン」と戸を叩く音がした。

「とおちゃん、誰か来たみたい」タロウはお父さんに話しかけた。

お父さんは「あれはトトントンだ、オバケだよ、早く寝ない子どものところへやってくる」

タロウは怖くなった。そんな事を言われたら、もっと眠くなくなる。

タロウは灯りもない真っ暗な部屋の中で、戸の方向をジッと見つめた。

雨が地面に落ちる音がよく聞こえる。しばらくするとまたトントン!という音が聞こえた。

タロウはもっと怖くなり、戸の方を見るのをやめてお父さんにくっついた。静かな寝息が聞こえる。

このまま寝てしまおうと思った時、おしっこがしたくなった。

「リナ、昔は外でおしっこしていたのよ、おしっこするためには外に出ないといけないの。」ママがお話の途中で話かけた。

タロウはお父さんを起こしたが寝息をたてて起きる気配はない。体がくっついているのはお父さんだけで何度もお父さんを揺らした。

するとお父さんはゆっくりと身を起こした。

「とおちゃん!おしっこしたい!ついてきて!」

お父さんはタロウの手をつかんで戸の所まで連れて行った。

でも戸を開けようとしない。

「ほらここで待っててやるから早く行ってきな。」

仕方なく自分で戸を開けて外に出た、家の中よりも外の方が明るく感じた。

そして雨の中近くの木まで走って行っておしっこをした。木の下は少し雨がマシだった。

そして又家まで走って戻った。

「ちゃんとオシッコ済ませてから寝るんだぞ」

お父さんはそう言いながら体についた雨を払い、手拭いで体を拭いた。

戸を閉める時、水が中に入って来た。

「さっきの音は雨が戸に当たる音だ、怖くなんかない、次に行くときは一人で行けよ。さあ今日はもう寝なさい」

 

翌朝目が覚めるとタロウはいませんでした。

戸の入り口には無数のあしあと。

近くを探すとタロウは鶏小屋の中で眠っていた。

タロウが話すには昨日の夜、オシッコをしている時に全然知らない子供が家に走って行った。その子はお父さんに体を拭いてもらっていた、その時にタロウの方を見て笑った、とても色が白く生きている感じはしなかった。でも笑った顔はとても幸せそうだった。そしてお父さんが戸を閉めた。

タロウは戸の前にしばらくいたが、外から戸を開けられないので、鶏小屋まで行って中に入って寝たらしい。

その話を近くに住むおばあさんにしてみると

「そりゃあこの世のものじゃない。親を連れていく子供の化け物だ。大人は夜になると子供の見分けがつかなくなる。それで大人を連れていくんだ。だから子供は早く寝て、夜には出歩かない方がいいんだ。」

「リナ、早く寝てくれないとパパやママが連れてかれるの。だから早く寝て頂戴。」