大阪の市内の学生の話ですがね、大学生になってしばらくたった頃、夏休みに中学校の同級生で集まって、飲み明かそうという話になった。
声をかけて予定が合ったのは自分をいれて四人。
一人は仲が良かった友人、二人はそうでもない友人だったが、懐かしさもあって、その場のノリで集まる事になった。
仲の良かった友人は進学せず親元を離れて一人暮らし。集まる場所はそこに決まった。
食べものと飲み物はおのおの持ってきて、それぞれツマミにすることにした。
その日になり最寄り駅で待ち合わせ、部屋へ向かった。高校卒業したばかりだからアパートだろうと思っていたが、築年数はかなりいってるが立派な分譲マンションに着いた。
「ここ?」
「そうやで」
「すごいやん!」
みんな小声で話す事を想定していたので、嬉しい誤算だと喜んだ。
「家賃高いんちゃう?」
「親の知り合いの部屋やから、ほんまに借りたら15万ぐらいみたいやで」
部屋に着くと懐かしい話で盛り上がった、気付けば夜中の2時頃、この部屋を借りている奴が次の日に急な仕事が入ったから寝るといって、ベランダの方にある狭い部屋に入って行った。
部屋の間取りは3LDKでもう1つの部屋が主寝室に適してると思ったが、狭い部屋で寝るなんて妙だなと思ったが、話題が昔好きだった同級生の話しになりすぐに忘れてしまった。
さらに時間が経ち、3時を回った頃、急に暑くなってきた、冷房はつけっぱなしだったが何せ暑苦しい。暑いなと思いエアコンのリモコンを操作して設定できるだけ最低の温度に変更した。
しかし一向に涼しくならない、むしろエアコンからでる空気は熱い風だった。
「あかんわ、これ壊れてるわ。もう切っとくで。」
「ちょっと窓でも開けよか」
「ベランダの窓開けとこや」
窓を開けるとスーと涼しい風が部屋に入ってきた。
「あーすずしー」
不意に玄関の方から音が聞こえた。
ドアに何かがぶつかる様な音、ドンチャンやっていたのはリビングで、ガラス戸を挟んで廊下があり、玄関がある。
「何の音や!」
泥棒か?とも思ったが、その時また涼しい風がベランダから入ってきた時に同じように音が鳴った。
三人は顔は見合わせた。
「風のせいやん!」
「びっくりしたあ!」
「とりあえず窓閉めてみよや!」
重いベランダの窓を閉めた。
そして三人は廊下と隔てるドアを見つめた。
ドンドン!
と音が聞こえた。今度は風のせいではない。三人は再度顔を見合わせた。
マンションあるあるで隣近所がうるさい時はドンドンと壁を叩く事があるらしい、だが音が聞こえたのは玄関方向、主寝室の前には洗面所、トイレ、風呂がある。つまり隣とは接していない方向から音が聞こえてきている。
ドンドン!
また鳴った。
「あいつ起こそうや」
「そうやな、泥棒かもわからんし」
三人は寝ている部屋主を起こした。
「ん、どうしたん?もう朝か?」
「この音なんやねん」
「こんな時間に起きてる事なんかないからわからん、新聞配達ちゃう?仕事あるから寝させてくれ」
といってまた寝てしまった。
「ラップ現象ちゃうか?」
「マジか?」
「俺霊感ないし、ぜんぜんわからん」
「とにかく確かめようや、落ち着かへんわ」
「泥棒やったら捕まえたら感謝状もらえるらしいで」
こういう時に男が三人いれば気が大きくなる、武器になるようなものは室内にはなかったので、取り敢えず鍋を持った。
「押すなや!」
こういう時は何故か後ろにいる奴が、前の奴を押す、廊下へ続くドアゆっくりと開けた、人の気配はしない、そしてまた廊下の先にある玄関のドアがドンドンと叩かれた。
「これイタズラやぞ!」
「ふざけんなよ!」
大きな声を出すと、玄関の向こうから走り去る音が聞こえた。
「くそ!逃げよった!」
「タチ悪いな!」
「捕まえようや!」
玄関を開けて我先に追いかけた、エレベーターべとべと向かったらしい。
靴を履きつつ、エレベーターの前まで来た。
エレベーターはこの階に停まっていて動いていない。
「おらんぞ階段で逃げたんか?」
エレベーターの横にはやはり階段があったが走り去る足音はとくに聞こえない。
階段に気をとられていると不意に
ドンドンと音が鳴った。
今度はエレベーターから聞こえた、エレベーターの内部だ、とても重々しい叩く音。
ドンドン!ドンドン!
今度は音と一緒に悲鳴や嗚咽が聞こえた。
三人は恐怖で動けずにいたが、不意に我に返り、中に誰かが、閉じ込められているかもしれない。エレベーターの呼びボタンを押した。
音は止み、ドアがゆっくり開いた。
中には誰もいなかった。
三人は部屋にかけ戻った。逃げる最中の事は誰も覚えていない。
あれほど暑かった部屋が寒く感じた。
朝は間もなく来た。部屋主を叩き起こし、このマンションで過去にどんな事件があったのか問いただした。
答えは以外だった。
このマンションは新築以来事件も事故もない、このマンションが建つ前も、埋め立て地になるので過去に戦場にになった事もない。
だとするとあれは一体?
帰る時に乗ることに躊躇したが、エレベーターに乗ってみた、開閉ドアに無数の手形がうっすらついているようにも見えた、人が触るだけでも指紋ぐらいつくだろう。三人は二度と来ない事を誓い、このマンションを後にした。
曰く付きのエレベーター。
エレベーターは新品だとかなり高価で維持費も高い、だから中古のエレベーターを使用しているマンションも少なくない。
あなたのマンションははたして。